ジェイ・シード株式会社が運営する起業家育成オフィス「Venture Generation」にて磯崎哲也事務所 代表兼Femto Startup, LLP(有限責任事業組合フェムト・スタートアップ)のゼネラルパートナー 磯崎哲也さんに「設立からエグジットまでの資本構成について考えよう!」をテーマにお話頂きました。
磯崎哲也さんの思うベンチャーとは「1回関わると病みつきになり、常にベンチャー周りで働きたくなる」から始まり、1999年頃からベンチャー投資をしたりインキュベーションを実施されている。インキュベーションは気が長く、2000年のシード期に投資を受けた株式会社アイスタイル(@cosmeやcosme.comの運営会社)は2012年に上場承認が下りて、10年以上掛かっている。ジェイ・シード株式会社の代表取締役社長、C. Jeffrey Char(シー・ジェフリー・チャー)もインキュベーションを2000年から初めて12年間で14社、ハンズオンでインキュベーションをすると長いスパンで考える必要がある。磯崎さんは重要な創業時に株や資本政策等で失敗をしないようにFemto Startupでは投資先にCFOとして関わり次のファイナンスまで携わる為、同時進行では3社から5社に限るが幅広くサポートする。Femto Startupの第1号投資は 株式会社ピースオブケイクに320 万円を投資し、第三者割当増資で 5.2%の株を取得しました。
セミナーで話された概要
・ベンチャーキャピタルとストックオプションで30%以内でないと上場支援をしないという大手証券会社もいて、実質的な日本の上場時の資本政策上の制約は大きい
・幸せな王子様(The Happy Prince)のように気前良く株を配布するとexit時(日本での上場の場合)大変になるので資本政策に関してはケチになった方が良い
・最近までは日本では友達や仲間と創業するケースがあまりなく、シリコンバレーでは仲間と一緒のケースが多く、Y CombinatorのPaul Graham氏も仲間との起業を推奨
* 参考:「お笑い」で考える「仲間との起業」の記事を磯崎さんはYomiuri Onlineに投稿している。
・創業期における株はreverse vesting(創業メンバーが辞めた際は元値で買い戻す契約または途中で辞めたら返す条件)を検討した方がいい
*もちろん創業メンバーが辞めないで仲良く事業を拡大するのが一番
・reverse vesting等を考慮する際、株をあとから譲渡等を実施すると譲渡益が発生するので残された創業メンバーが打撃を受けない形を考慮した方が良い
・日本に比べると米国ベンチャーの公開前資金調達額が大きい、公開時の目論見書(S-1)に記載された調達額(資本金+資本剰余金の額)の例だとGoogleが8億4,500万ドル、Linkedinが1億2,900万ドル、Grouponが13億7,600万ドル、Zyngaが9億7,400万ドル。それに比べると日本のベンチャーの公開前資金調達額は楽天が4.45億円、DeNAが約30億円、ミクシィが9,840万円、グリーが4.8億円。
*例外もあり事業モデルに応じてはライフネットのように134億円調達した会社もある
・資金調達額から見ると米国は競争が激しい、投資も集まるので競合が多数発生する、米国のベンチャー投資は日本の20倍前後
磯崎さんは資本政策は大事と何度も話された。最近増えているインキュベーターに創業時時点で数%は大きいが、次のファイナンスにつながるまたはシナジーがあるかどうかを良く検討した方が良い。有名人を株主に入れる事に関しても安定株主になるかまたはメリット等の検討が重要。海外だと大物CEOを呼び込む時に5%を渡すケースも見られるが、exit時(日本での上場の場合)を考慮して創業時から株の比率を計画的に組むのが重要だ。
磯崎さんのプレゼン後、ジェイ・シードのジェフリーも加わりパネルセッションが行われた。セミナーでは質問も多く、reverse vestingやstock optionについても議論された。Stock optionに関しては日本の場合基本的に上場までに辞めた場合は無効、アメリカは高い給料を払えないのでstock optionを渡して貢献してもらい途中で辞めても行使できる違いについても話された。Stock optionに対しての価値も上がっているのでCliff Vestingの手法を最近アメリカでは使用されている例もある。
上記写真はセミナー後のネットワーキングセッション。セミナーは大変勉強になった2時間のセッションでした。磯崎哲也さんありがとうございました!
磯崎哲也さん
磯崎哲也事務所 代表、Femto Startup, LLP ゼネラルパートナー 公認会計士、税理士、システム監査技術者、公認金融監査人(CFSA)
1961年生まれ、早稲田大学政治経済学部、経済学科卒業。長銀総合研究所で、経営戦略・新規事業・システムなどの経営コンサルタント、インターネット産業のアナリスト等として勤務。その後、カブドットコム証券の社外取締役、ミクシィ社外監査役、中央大学法科大学院兼任講師などを歴任。公認会計士・システム監査技術者。著書「起業のファイナンス」。ブログ/メルマガは「isologue」。
Venture Generationとは…
10数年にわたり、ベンチャー支援をしてきたジェイ・シード株式会社が運営するインキュベーション施設。同じフロアにデスクを並べるコワーキングスタイルで30席を収容。最大の特徴は、ジェイ・シードの持つ起業家や投資家、企業のマネジメントなどのネットワークから直接アドバイスを受けることができるという点。ベンチャー企業に役立つワークショップやセミナー、ビジネス関連のイベントを積極的に開催。今年3月、中央区八重洲にオープン予定。